炎症性サイトカイン インターロイキン6(IL-6)が悪液質・体重減少に大きく作用

免疫細胞から生まれるサイトカインが原因

体には、異常な細胞やウィルスを撃退するために「免疫機能」が備わっています。

免疫機能の解説ページ

免疫細胞である「マクロファージ」などが攻撃をするときに、「サイトカイン」という物質が、細胞から細胞への情報の伝達を助け、さらに攻撃を促進させます。

補足
サイトカインは免疫細胞(マクロファージ、T細胞、B細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞など)が作り出すタンパク質分子です。このサイトカインが免疫細胞のレセプター(受容体)にくっつくと、活性化させたり抑制したり、増殖させたりと、種類によって様々な動きをします。
サイトカインの種類がわかりやすい参考サイト:サイトカイン | 愛-madoka.com

がん細胞から生まれるサイトカインはひたすら炎症を繰り返す

一見いいやつなのですが、がん細胞とがんに反応した細胞・組織からサイトカインが過剰に産生・分泌されるとがん細胞の周辺で炎症を引き起こしてしまいます。

悪液質の仕組み 炎症性サイトカインが炎症を引き起こす

「炎症」とは免疫が感染を阻止しようと攻撃したり、除去された老廃物・組織の修復に必要な材料を運搬するために新しく血管を作ったりすることです。この働きにより、発赤・発熱・疼痛・腫れ・動かせないといった炎症の症状が出るわけで、通常炎症が起こるのは体を守ろうとする機能ですので悪いことではありませんし、普通なら原因が無くなれば炎症も自然とおさまります。

自然とおさまるのは「炎症を起こすサイトカイン(炎症性サイトカイン)」と「炎症を抑えるサイトカイン(抗炎症性サイトカイン)」が均等に産生されるからです。

ですが、「がん細胞から生まれる」サイトカインは炎症を起こすものしか産生しないのです。そう、誰も炎症を抑えてくれないのでNOブレーキです。「炎症性サイトカイン」が過剰に生み出されることが、がん悪液質を誘発する要因となっています。

炎症性サイトカインの種類
炎症性サイトカインには「インターロイキン1β」や「インターロイキン6」「インターロイキン8」「TN-α」などがあります。

悪液質によって体重が減る仕組み

炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6)が悪液質・体重減少に大きく作用しているようだとわかってきています。

IL-6は筋肉を分解する

がん細胞によって過剰に作られたIL-6は、

体内のタンパク質を分解する酵素のスイッチを常に「オン」の状態にします。そのため体内のタンパク質はアミノ酸に分解され、タンパク質から構成されている全身の筋肉はどんどん萎縮していきます。

悪液質の仕組み 炎症性サイトカインが筋肉を分解する

つまりタンパク質分解酵素をたくさん放出し、筋肉が分解されます。
分解されたアミノ酸は、がん細胞が自らのエネルギー・栄養源として取り込んでしまいます。

そしてまたがん細胞が力を増してIL-6を作り出し、筋肉を分解し、タンパク質を搾取するという悪循環が起きているわけです。

がんの炎症が活発=筋肉が分解されて食べられている ということになります。

 

IL-6はブドウ糖を集めるために血管を新しく作る

「がん細胞は毛細血管を新生して栄養を補給する」これはどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?

この仕組みに寄与しているのが、実はIL-6。こんなことがわかっています。

炎症を促進するIL6には、グルコース(ブドウ糖)を中心とするエネルギー源が局所で枯渇すると、その補給のために血管新生因子をその場で産生させる作用もあるのです。つまり、がん細胞の周囲で炎症が進行すると、同時に新たな血管が次々につくられ続けます。がん細胞はその血管を通して、生体が必要とする栄養を奪い、自らを増殖させ続けていくのです。

引用元:EPAががんによる炎症を抑え、QOLを改善「あきらめないがん治療」を支える新たな栄養療法 | がんサポート

悪液質の仕組み 炎症性サイトカインが血管を新生する

がん細胞は正常な細胞よりもブドウ糖を多く取り込むため、IL-6が血管を新生してブドウ糖を集める道を作るのはがん細胞にとってプラスに働いてしまうのです。

 

IL-6は脂肪を燃焼させることに関係している

この他にも、最新の研究では「褐色脂肪組織化」がIL-6によって過剰に促進され、体を動かさなくても脂肪が勝手に燃焼されてしまうこともわかっています。

▼詳しくはこちらの記事を参照。
がん悪液質は治せるかもしれない!?(twitterまとめ 6月9日~13日)

 

IL-6は食欲不振やだるさ、痛みも引き起こす

さらに、炎症性サイトカインは脳神経系にも影響を与えており、食欲不振倦怠感不眠抑うつ難治性がん疼痛も引き起こすことがわかっており、直接的にも間接的にも体重減少に関わっています。

 

体自身もがん細胞にエネルギーを奪われているため、エネルギー不足を補うために体脂肪や筋肉を分解して利用してしまいます。

体とがん細胞がタンパク質の奪い合いをすることにより、どんどん体重が減ってしまうということです。

むくみ、腹水の仕組み

足や顔のむくみ、腹水や胸水もがん細胞によって作られた炎症性サイトカインIL-6が関係しています。

IL-6は、血液中のタンパク質の主成分であるアルブミンの生成を抑制します。
アルブミンは血液中の水分を保つ役割をもつため、不足すると血管内から水分が漏れ出し、足などにむくみが発現し胸水や腹水は増加します。

つまり、がんの周辺で炎症が起こる(免疫が活性化しがん細胞由来の炎症性サイトカインが増える)ことで、IL-6が増え、アルブミンが減り血管内に水分が保持できなくなり、腹水や胸水が発生してしまうということです。

IL-6と生存率の関係

この炎症性サイトカインIL-6(インターロイキン6)の血中量と生存率には相関関係があるとわかっています。

悪液質の仕組み IL-6と生存率の関係

がん研有明病院の緩和ケア病棟に入院し亡くなった患者の最終入院時における血中IL-6値と、生存率(生存期間)の関係を示した。IL-6値が高い程、生存期間が短いことが分かる。この結果から高IL-6血症(がん悪液質)は心身の症状だけでなく生存率とも密接な関係があることが示唆される。

引用元:がん研究最重点課題の一つ、「がん悪液質」を克服できれば「天寿がん」も夢ではなくなる

つまり、炎症をなるべく抑え、IL-6の発生を抑えることが悪液質を防ぎ生存期間を延ばすということです。

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